なぜ僕は農業を始めるのか?
植村直己著「青春を山に賭けて」を読み返して気になったのでメモをしておく。と言っても、1971年の本文ではなく、1976年の文庫版のためのあとがきの一部だけれど。
結局、というよりも、最初からわかっていたことかもしれないが、山は他人のために登るものではないのだと思う。誤解されても仕方ないけれど、山は自分のために登るものだと思う。誰からも左右されない、自分の意志ひとつで行動できる単独行であれば、それが人のためではなく自分のためであればあるだけ、すべてが自分にかえってくる。喜びも、そして危険も。
私は五大陸の最高峰に登ったけれど、高い山に登ったからすごいとか、厳しい岩壁を登攀したからえらい、という考え方にはなれない。山登りを優劣でみてはいけないと思う。要は、どんな小さなハイキング的な山であっても、登る人自身が登り終えた後も深く心に残る登山が本当だと思う。